今日もちょっと手が汚れている。
そんな手も洗わずにパソコンのキーボードを叩く。
マニキュアでデコレーションされた指先が流行っているけれど、私は、そういうものとは無縁のまま…。
トランクを運んで、できた手のひらのまめもまだ、消えない…。
ゴツゴツした手。
仕事している手。
絵の具と油にまみれ、働く手が一番好きだ。
人の手も美しい手よりも
手仕事をたくさんしているような手の方が断然、好き。
あの日、見た夕暮れを描いている。
イタリアから、ドイツへ向かう飛行機。
一時間遅れで出発した飛行機の窓から、見た夕暮れ。
天と地が奏でる光の協奏曲のように、視覚を通して私の中、色彩の音色が鳴り響いていた。
インスピレーションはいつも、自然の中からやってくる。
さりげなくうつろいながら話しかけてくる。
ほんとうに自然の中には神様がいるように思う。
色彩の神秘の中、深く感じ、焼き付けるように眺めた。
刻々と姿を変え、たゆたいながら動く光の変遷。
キャンバスの中にも自然があって、光が闇に息をひそめたり、闇が光に目覚めたりと動きを止めない。
画面の中、どうなりたいのか絵の声を聞くように描き進める。
色を少しのせては、調整しながらも画面が変わっていくことに一喜一憂しながら、離れては近づいてを繰り返す。
地平線の絵は何度となく描いているのに、いつもたやすくはいかない…。
キャンバスの中にも神秘があるといつも思う。
我を出そうとすれば、自然は拒絶し、描かせてくれない。
素直な気持ちがなければいけない。
画面は、生き物のようだ。
これでいいかなと思うところまできている。
艶出しのルツーセを塗ったら、終わることができるかなぁ…。
一時間遅れの夕暮れ。
すべては必然の連続なのだと改めて、思う。