My Horizon

絵を描く日々や私の日常をつれづれなるままに、言葉と写真で紡ぎます。

墨と油にまみれて

金木犀の香りが立ちこめる夜を歩く。
ふくよかな香りについつい、深く呼吸してしまう秋の夜は気持ちがいい。


しかし、部屋に戻れば、油絵具と墨の匂いがごった返している。無法地帯のよう…❕

展示がある時はいつもそう…、しかたがないこと…。

水と油。

この相容れない特性を持つモノ同士。

これは私の中では、墨と油絵具にあたる。


墨を使いながら、水と墨の濃さと紙との相性やその不安定な動きに翻弄されっぱなしな日々が続いている。


私は、水墨画を描きたいわけではない。


新しい画材として与えられた墨を使い何か作品に結びつけることができないかと思っている。

私の絵のことを墨絵と言われたりすることもあるけれど、あくまで墨主体のミクストメディアなのかなぁと思っている。


ひとりの人間から生まれてくるものは、たかが知れている。それほど大きく差はない。


墨を使っても、油絵でも例えネジであったとしても、私の中を通過するとなんらかの共通項が見えてくると思いながらいつも製作しているつもり…です。


今年は、久々にアンデパンダン展に作品を出している。


久々の油絵の新作。
気に入っている。


これを描いている時に読んでいた本があった。

大岡 昇平さんの「野 火」

ずっと前から読んでみたかった。



大岡さんが実際に体験したフィリピンでの戦争体験をもとに書かれている。

まだ、映画は観ていないが、最初に原作を読んでおきたかった。

私の稚拙な言葉では、とうてい言い表せない内容。

戦争って、こういうものだろうなとしか言えない……。




戦場であるフィリピンの緑生い茂る自然の豊かさと戦でボロボロになって、極限状態の中、森をさまよう兵士との鮮明なコントラスト。

死をかけた駆け引き、物々交換の経済、野生と化した生物としての人間。


戦争のことを冷徹なまなしざしで俯瞰しながら描写している。

しかしながら、残酷な内容であるにもかかわらず、大岡さんの文体の美しさもあり、何度、読んでもその言葉の美しさに惹かれてしまうような不思議な魅力がある。

それは、大岡 昇平さん自身の魅力なのかもしれない。






”歴史は繰り返す”というが、繰り返して欲しくないこともある。



自分の中にも火種はある。


世界の大きな流れも一人一人の心の現れだとするのなら…。


今を生きてる空気感を描いてみたくなった。



そして、自分が感じ取っているリアリティ。

それを表現できる自由で穏やかな世の中で、いつまでもあって欲しいと思う。


仙台アンデパンダン展2017、10月8日まで開催中。
仙台市内の5つのギャラリーと連動している展覧会。
そのほかにもイベントがあります。

http://sendai21-independants.com/#gallery

私の作品は、いつもお世話になっているギャラリーチフリグリさんです。
どうぞご高覧ください。