毎年、見る風景。
ほんのちょっとした一コマ。
駅のホームに立っていると足元のコンクリートをカチ割って四方八方に伸びているタンポポとか、スギナとか…、そんな植物のたくましさにいつも感動している自分がいる。
がんばってんな、こいつって…。
そんな姿を毎朝、スケッチしていた時期もある。
その生命力を模写することで、そこにある力を分けてもらうように…。
最近、見かけた駅の風景の中に、レールとレールの間に百合が咲いていた。
茶色の石や枕木の中、はっと目覚めるような白さが印象に残る。
健気に咲いている。
でも、凛としたその姿にこちらも襟を正したくなるような気持ちになる。
電車のスピードから、巻き起こる風にも揺らめきながらもぐっと踏みとどまり、精一杯生きようとしている。
与えられた場所で、ただ、咲いて、生きている。
昔、とても大きな別れがあった。
もうどうしてらいいのかわからない日々が続いた。
若かったし、そんな大きなお別れをしたことがなかった私は、もぬけの殻だった…。
ふとある日、駅のロータリーに咲いていた花に目が止まった。
寒風吹き荒む2月か3月頃だったろうか…、彼らが、ただひたすら懸命に生きているように見えた。
花には、自分を良く見せようとか、こう思われたいとか、そういった欲のようなものが、一切ない。
その花たちを見て、自分のことばかりに囚われて生きている自分のことが、とても恥ずかしくなったのを覚えている。
人間は、花に憧れながらも、花のように潔くは、生きられない…。
そんな気持ちを綴ったことがあった。
「名もない花」
冷たい風の中で揺れてる花びら
かすかなざわめきが心に響く
なにげない日常で見つけた風景は、
見失った道の行方、心に問いかける
誰かを失うことで
一人きりになるのが怖くて
心の中にある
思いにとらわれたまま…
名もない花のように生きられたなら
こんなに思い悩むこともないのに…
土の上、横たわる可憐な花たち
深い悲しみにくれることもなく
日差しを浴びながら立ち上がる力を
蓄えながら静かに今を生きてる
ひどくためらい感じた
前に進むのが怖くて
あなたのくれた言葉さえ
素直に信じられないまま…
名もない花のように生きられたなら
こんなに思い悩むこともないのに…
自然は、いろんなことを教えてくれている。そんなささやきに耳を傾けたい。