My Horizon

絵を描く日々や私の日常をつれづれなるままに、言葉と写真で紡ぎます。

母 体 回 帰(下)

冬空に白くフワフワとした小さなものが漂っているのが目に映った。

初めて見た、雪虫

虫というより、妖精のようにふんわりとした白いドレスを纏っているかのように、飛翔しながら本格的な冬の到来を知らせにきてくれた。

そして、展覧会はスタートした。



3日間掛けた設営。

心配だったインスタレーションも1日がかりでなんとか形になった。
繋ぎ合わせた平面の和紙が立体として立ち上がり、円形になって行く過程には、なんとも言えない感動があり、思わず声をあげてしまった。
微調整をして、その下に敷いた赤い絨毯の大きさもちょうど良い大きさでだった。


ギャラリーの2階の設置には、3日間、悪戦苦闘しながらも、ようやく形になった。
こちらは新作と共に近年の作品も展示しつつ、開放的でもあり、最後に原点回帰や祈りの要素も含みながらも自然とまとまったような構成にする事ができた。

不完全な箇所もあったけれど、それもまた良しと思いながら、展覧会を行いつつ手直しを行なっていった。
展示の始めと終わりにインスタレーションで使用していた160個のLEDライトの電源のスイッチがなかなか渋く硬いもので、爪がボロボロになったりもした。

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蓋を開けてみたら、このご時世にも関わらず、いつもの展示の3倍以上の方々に来場していただき有り難い限りだった。
毎日、来場者とお話して、様々な意見を聞かせてもらった。

『"執 念"を感じました』と3人の男性に言われたのが印象に残った。
確かに私は執念深い人間だけど、それぐらいじゃないと描き続けられないんじゃないですか?と改めて問い返してみたくなったけれど。笑




11月23日新嘗祭の夜には、川村かなえさんに三昧琴の演奏をしてもらえることになった。
チタンでできた三昧琴という楽器。その不思議な音色に耳を傾けた。単音だけだと鐘の音のような音色なのに、音が重なれば重なるほど、残響と今、響かせた音のバイブレーションがどんどん増幅し、新たな音の層を空間の中に作り出し、その音が足の先から入ってきて、少しづつ身体の中を渦巻くように上昇してくるのを感じた。響きあう微細な音の層の中、至福を感じた。

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ギャラリー1階に展開していた根底のテーマが”女性性”でもあったことで、ドーム型の和紙の中に入ったかなえさんと彼女が身に付けていた真っ赤なドレスとが相まって、宗教画の聖母を思わせる雰囲気だった。それは、私がイメージしたものが具現化した現象でもあり、新嘗祭の夜の中、刻印された記憶となった。



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11月28日、6年ぶりのトーク&ディスカッションを行った。

朝から着付け講師でもある高橋まさきさんのコーディネートによる斬新な着方の着物を一日身につけてさせて頂いた。まさきさんの想像力のお力も借りつつ、コラボしながら”形に捉われない奇抜で自由な芸術家”スタイルを味わう事ができた。布を纏う事は、意志を纏いながらも、それを体現することの自由を味わうことでもあるのだと改めて実感させていただいた。その後、中本誠司現代美術館のコーディネーターでもある垂石陽子氏にナビゲートしてもらいつつトークは展開した。和やかで楽しい1日が暮れていった。


そして最終日の夕方、美術館の許可を得て、短時間ではあったが、リアルキャンドルを灯す事ができた。それは私にとっても念願だったので、和紙が燃えないように注意を払いながらも内側に灯された炎を目にした時、何かとても報われたような気持ちになった。

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自分が作った子宮の中、無数の細胞のような血潮が蠢くシェルターの中で最後に思いに耽った。



言葉にはならない気持ちが込み上げてきた。



私は私なりにやりきったんだ…と。


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このようなご時世の中、ご来場くださった方々、
展覧会に協力してくださった方々、
中本誠司現代美術館のスタッフの方々、
心からの感謝を申し上げます。

ありがとうございました。

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