My Horizon

絵を描く日々や私の日常をつれづれなるままに、言葉と写真で紡ぎます。

旅の記憶2018 ・イタリア②〜甘美なモスタルダ&ガルダ湖で足湯につかる〜

次の日からは、列車での旅。

事前にネット予約していたので、現地でのやり取りはない。

イタリアでは改札口がない。
(ヨーロッパはどこもそうなのかな?)

電車に乗っても車掌さんが来る時と来ない時があり、これって大丈夫?と思わずにいられなかった。これじゃ、キセルもオッケーな感じ??こんなアバウトな感じでいいの?と日本人の私は余計なことを心配してしまった。


車窓から広がる風景は、BSで放送されている三上 博史の語りでおなじみの「小さな村・イタリア」の田舎のドキュメントよろしくの風景が窓の外、流れていた。畑が広がり、その先になだらかな山脈が近くに望める。そんな風景に無性にホッとするのは、私が田舎生まれだからだろうか。自然と人との生活が近い、それが調和した世界のように思える。それが私の中での原風景に近いと再確認した。昔から続く普遍的な自然と人間との営みが感じとれる風景のように思うからだ。そういう風景が一番、落ち着く。



マントヴァという街へ着いた。
旅の友のお知り合いの家に滞在させて頂くことになっていた。
ここは、湖水地方として有名な場所。

ここでも大理石の床にオイルヒーターのふわっとした温かさに包まれた室内が招いてくれる。
大理石の床はイタリアではとてもポピュラーなものなのだろうが、私から見るととても豪奢なものに見えた。その家に住む二匹のワンちゃんたちはちょっと人見知り。まるで小さな子供に接するのに近い。


次の日は、車で遠出。マントヴァのチッタ(街)へ。
ドカーレ宮殿でオペラリゴレットの像ともご対面。
小さ古い宮殿の列が続く。
古い歩道を埋めるたくさんの丸い石の凸凹が、ちょっとツボ押しによいかもと思いしばしその上を歩く。


宮殿を抜け、チッタの中の商店街を歩いていると気になるものを発見。

ガラス瓶に入った色とりどりのフルーツが店のショーウインドーに並んでいる。それはモスタルダというフルーツをハチミツとマスタードに漬け込んだもの。オレンジやマスカットなど色鮮やかなフルーツが可愛く陳列されている。フルーツとマスタード・・・、予想できない味!そこで一番、想像できるイチジクのモスタルダを購入。
次の日、朝にチーズと一緒に食べてみた。口に入った時には、フルーツとハチミツの甘さが広がってその後からハチミツのまろやかさに角の取れたような辛さが舌の奥からエコーのようにこだましていた。
なかなかの美味で、あまりの美味しさに余った汁まで飲み干してしまった。




次に訪れたのは、中世の要塞と教会がある村。
中世の箱庭・ボルケット(要塞化された集落というロンバルディア地方の方言)。イタリアで最も美しい村と言われている。

手焼き煉瓦で造られた橋や塔は、朽ちてはいるものの趣きがある雰囲気で、ミンチョ川が流れ、橋の中央に立って遠くの景色をしばし眺めていると、なぜだろう・・・懐かしさと悲しみがこみ上げてきた。しばし立ち止まって物思いにふける。




再び散策していると小さなジェラート屋さんがあった。ヨーグルト味のジェラートがおすすめのお店だったが迷いに迷った末、超・定番のバニラを選ぶ。
お姉さんがジェラートをよそっている間に、窓際で丸くなっている猫がいることに気づき、近寄ってみた。
かわいいなぁ~と身をかがめその猫と目が合った瞬間、ドキッとした。
その猫のまなざしは、中世の要塞の街の名残りなのか・・・?!
鋭く目を光らせて私の行動をじっと息を詰めて見張っているかのようだった。そのとがったまなざしに思わず、後ずさり・・・。むき出しの野生を感じた。





そして、その日の最後に訪れたのがシルミオーネという場所。

イタリア最大級のガルダ湖周辺を散策。ローマ時代のお城であるスカラ家のお城をくぐり抜けると商店街が広がる。

オフシーズンということもあり、あまり観光客はいなかった。お土産さんを流して歩く。


そして、ガルダ湖の湖面沿いを道なりに歩いていると、ほんのりと硫黄の匂いが鼻元をかすめた。ふと見ると、海水パンツをはいたおじさんが丸く石で囲まれた温泉らしきものに首までとっぷりと浸かっているではないか!なんと湖畔の小さな露店風呂!手を入れて、お湯加減もちょうどいい感じ。そそくさとズボンの裾をまくりあげ、靴下を脱ぎ、人気のない奥の方で足だけ浸かった。イタリアに来る前のパリでの展覧会からず~っと動きっぱなしの足をねぎらうように。そして、少々寒さが残る曇り空のガルダ湖の夕暮れの水平線をしばし眺める。こんなにも遠い場所にきていながら、小さい頃から、身近に温泉がある生活をしている東北人の私にとってみれば、なんだかとっても親近感が湧くこのロケーション。ちょっとした極楽・・・、それも北イタリアで!というのがなんとも面白いものだった。


後から知ったことだが、ここはローマ時代から続く温泉があり、今もテルメ(温泉保養地)があり、バカンスシーズンにはたくさんの観光客で賑わうという。オペラ歌手のマリア・カラスの別荘などもあり、きっと生前のカラスもこの温泉に癒されていたにちがいないと想像してみた。


シルミオーネをグルッと一周して、スカラ城へ戻ってきた。湖畔に面した古びた要塞には、古くからの紋章を刻んだ旗が寒風の中、なびいていた。


つづく…

#イタリア #マントヴァ #モスタルダ #シルミオーネ #足湯 #旅 #旅行記