My Horizon

絵を描く日々や私の日常をつれづれなるままに、言葉と写真で紡ぎます。

虫の音★宇宙

目を閉じると鈴虫、コオロギ、マツムシ…、さまざまな虫たちが奏でる音が聴こえてくる。
たどたどしかった音色も日に日に上達してゆく過程もなかなか味い深い。

毎年、聴きなれた音色の響きの中から、"あれあれ、新種?!"と思うような高周波の音がもれ聴こえる時もある。聴いたことのない音を耳にするたび、どんな虫なのかと思いを巡らせてしまう。


外から聴こえてくるそれらの音色を強く感じながら、眠りに落ちてゆく夜がたまらなく好きだ。いつか森の中、テントに寝袋を敷いて地べたからその音色を感じてみたいとさえ思う。


けれど、気がつけば一日中、人工的なノイズの隙間から、彼らは呼吸するかのように何かしらの音をたてている。
生活の中、そんな音色と一緒にいられることがどんな音楽よりもとうとく感じられる。



小さな畑をたまに眺めていると毎年、虫の種類が違うことに気がつく。少しづつ変化していっているのかなぁ?
ここ数年、見かけるのが金色や銀色でスッとしたスマートでいながらもとても繊細な姿の虫たち。なんだかとっても宇宙的とも見受けられるデザイン。
もともと虫にはくわしくもなく、名前を覚えることも苦手なので、その子らが新種かどうか詳しくは書けないけれど・・・。

最近、印象に残っているのがメタリックなレモンイエローでスッと細身で洗練された容姿の小ぶりのハエによく似た子や蜂とハエの間ぐらいの姿をしているゴールドの子。シュッと細身で細くて幅の狭い繊細な羽を持つ赤茶のトンボだったり。見たことのない子ばかり…。どの子も、みな、やたらと動きが俊敏でもある。

少しづつ自然もハイブリット化し、進化していっているのだろうか…?!



虫つながりの話で、いつも虫眼鏡を持参して散歩に出かけるという私の友達がいる。
父親ぐらいの年代で"妖精おじさん"と勝手に呼んでいる。
会う時に昆虫図鑑を持参したり、スルッと虫の正確な名前を言い当てたり。トンボの大群に囲まれたことなどを切々と語ってくれる永遠の野郎っ子だ(東北弁”やろっこ” /男の子)。

ある日、その友のお気に入りという小高い丘の林へ行った時のこと。見たことのない甲冑を身にまとったクワガタをもっと平たくして小さくしたような黒や赤のイカツイ2cm〜4cmぐらいの甲虫類の虫に共に興奮してしまった。そのイカツイ超合金ロボをコンパクトにした虫の動きをつぶさに目で追いながら大きな大木を観察していた、初夏の夕暮れ時に…。




虫の話で一番、記憶に残っているエピソードがある。


あれは2021年の暑い日。

山を越えて、隣のまた隣の街へ行った時のこと。丘の上に道の駅があり、さらにそこの出身者であった彫刻家の作品が散策路に飾ってあるということで、興味がわいて登り始めた。
その頂上付近にあまり人の手が入っていないエリアがあり、ちょっとした林になっていた。無性にその中に入ってみたくなった。

そこでは蝉たちの声が今を盛りとばかりに、大音量で鳴り響いたいた。
鬱蒼とした木々の中に入り、そこの中心の場に立ち、目をつぶって意識を集中させて全身を耳にしてその音を浴びるように聴いた。

上から降ってくるようなジィッ〜、ジィッ〜、ジィ〜ッ!!ミ〜〜ンミン、ミン、ミン、ミンミンミ〜〜〜ン…!!

小さな地響きがするくらい降り注いだ音が反響し、土の上からまた突き上げてくるような感じで、その音に全身、飲み込まれてゆき、野生の迫力の只中で私は完全に消えいくようだった。

何千という蝉が羽を動かし短いいのちの躍動をこの瞬間に完全燃焼させているみたいに、そんな蝉宇宙に包まれているような気がして、浴びるようにその音色と振動をカラダの中、記憶した。ただ得体のしれない一体感だけがそこにあった。




秋の夜は、虫たちの祝宴のような季節でもある。

虫の種類ごとに音色はさまざまだけれど、なんとなく振動している”ゆらぎ”というリズムが宇宙由来の振動数とどこか波形が似ているのではないかと、ふと思った。

それは自分が横になっている時、うつぶせの状態で聴いた自分の心臓の鼓動音とも似ているのではないかという予感。トクトクッ、トクトクッとゆるやかに波打つように規則的に私の中、止むことなく音をたてている。いつかはこの音が途絶える時がくるのだなぁ…とぼんやり思いながら聴いていたりして。

この鼓動音と虫の奏でる音色。

鼓膜に触れる感触は、みなちがうけれど、なにか深淵な太古の響きを共に奏でているような気がしてしまうのは私だけだろうか…。この肌の内側の内蔵感覚で、共に生きる生物のいのちとしての共通のゆらぎを感じ取ってしまう。

さらに、夜空の星々のまたたきがもし音になったとしたら、虫の音のような振動数を奏でているのではないかと夢想してしまったこともしばしばあった。

夜な夜なそんな想いに浸りながら、眠りの中、落ちてゆく……。





☆画家のショーゲンさんのYoutube、虫つながりのエピソード、よかったらご覧ください☆彡
youtu.be