白い空間に作家たちのポートレート写真が点在していた。
さまざまな個性と共に切り取られている写真の中に、戸惑いや試行錯誤を経て、新しい挑戦への足掛かりを得た写真家の姿が垣間見れる。
写真家 阿部 貴彦氏の初個展のクロージングを締めくくる夜に、芸術家の神髄のようなパフォーマンスを目の当たりにした。
空間芸術家・大串 孝二、墨象家・亀井 勤、舞台女優・佐々木 久美子、舞踏家・小山 朱鷺子による流れるようなコンビネーション。
広大な宇宙からこだますような微細な振動がギャラリーの空気を震わせていた。
白い和紙の上に墨の線で作られた中庭と
そこに置かれた ”意 志”。
その周りでは、甲高い拍子木にも似た音が響き渡り、新たな結界を生み出していた。
清められた場に、胸の中心から真っすぐに届けられる光を含んだ声によって、宮澤賢治の世界が目の前に現れた。
燃え尽きそうな蠍の緋色の熱量を感じ…、
賛美歌が導く世界へ誘われる。
白いキリストが支える中、
宗教画、そのままの青いドレスに吸い込まれる観衆の視線の先のアベ・マリア
壁際に両手を広げ、
帽子を脱ぎ、長い髪が顔を覆いながら,壁づたいに身もだえするように献身の祈りを捧げていた。
観ている者たちの自我も宇宙の藻屑と消え去り、熱いものが目頭へと駆け登ってくる。
無私の祈りの中、愛の波動が夜の闇に静かに滲むように広がって行った。