布施 明の1975年のヒット曲。
母親が好きだった歌手。
母親は、当時、30代後半だったけれど、1人でコンサートに行くほどに好きだった。
母親は、冬になるとよくシクラメンを買ってきていた。
よく玄関先に置いていたが、そこは寒過ぎて、いつも長持ちすることはなかった。居間に置けば、暖か過ぎて、駄目なってしまう。
そして、シクラメンは、また、玄関先に置かれた。
そこがシクラメンの定位置だった。
懲りずに毎年、シクラメンを買っては、そこへ置いていた。
私は、てっきり、シクラメンは、あまりこの家には、合わない植物だと思い込んでいた。
母親が亡くなる最後の年に買ってきたシクラメンがあった。
そのシクラメンは、まだ、生きている。
母親が亡くなってすぐあたりから、台所の出窓の所に置いてみた。
そこでは、枯れることなく、毎年、花を咲かせている。
”お母さん、ここがベストポジションたったんだよ。”と心の中で、何度、言ったことだろう…。
他の人から貰ったもの。
私が個展で貰ったものと、3つの鉢植えのシクラメンは、今が盛りと咲いている。
台所で咲き続けている小さな命たち。
朝ごはんを食べながら、なんとなくシクラメンの花びらを見ていたら、それが蝶々のような形に見えた。
定位置をみつけた物言わぬ花たちは、目に見えない世界からの使者なのだろうか…。
台所のいつもの場所で、ひっそりと今日も見守ってくれているのかもしれない。