何十年振りかのこと。
黒闇に、たゆたう波がうねり、海風とエンジン音しか聞こえない夜…。
目に映る世界が、漆黒の闇に包み込まれながらもその闇の先を切り裂くように船は、進み続ける。
なんて、したたかな力強さなんだろう。これが人間が生み出した力なんだ…。
そんなことを感じながら、一人、デッキに立って、見飽きるまで、艶やかな黒い闇の中、全身をそばだてて、じっと夜を感じていた。
潮風が髪をかき乱すけれど、この風が、頭の中、渦巻くことを全部消し去ってくれればいいのに…と思う。
大海の中で過ごす夜。
身がすくむような怖さだけれど…、その危うさが、私を刺激する。
ちょっと危険な方が、生きてる感じがするから…。
だから、一人で旅に出てしまうのかな…。
自分だけの世界に陶酔できるから…。
でも、国内だし、まだ、安全か…。
船の中で、私のラッキーチャームを見つけた。
闇に足がすくんだ中、見上げた空には、ちょっとだけ星が見えた…。
よいことがありますように…。