夜、床につく時、
寝台は、舟にかわる。
目を閉じるのが乗船の合図。
眠りによって、魂は肉体から離れ、舟に乗り、
銀河の川を渡り、あの世とこの世を結ぶ世界へと毎夜、小さな旅に出る。
自分の身に銀色の糸をつけたまま…。
鮮明な夢は、いつも現実と見まがうかのようにいつもカラフル。
現実の手触りにも似て。
夢の世界に辿り着くと何故か私は自分のベッドで眠っていて、下の階の物音で目を覚ます。
階段を降り、居間に向かうと3年前に旅立ったおんちゃんが、仏壇のある部屋に居た。
横たわって目を閉じている父を抱きかかえながら…。
私はびっくりして、
「おんちゃん、なんでここに居んの?!」
と大きな声を出してしまった。
けれどおんちゃんは、穏やかな笑みを浮かべたまま、何も喋らなかった。
いや、喋れないようだった。
その顔の輪郭がぼやけていて、不思議な印象を残した…。
心配は、いらない…。
そんな言葉が頭の中、浮かんだ。
私は、これまでたくさんのことを願ってきた。
けれど今は、祈るということを教えてもらっているように感じる日々を過ごしている。
まるで修道女のように隠遁生活をしながら…。
深い深い夜の海を舟で行き来するように無数の魂が、夢の中で生きている。
オールのない舟の旅。
行き先のわからない旅の果てに待つ、朝の光。
それは目覚めた時に不思議な実感を伴った感触をさりげなく残して、現実の私の肩を叩くように目を覚まさせてくれる。